今月の主題 消化器薬の使い方
胆道疾患
胆石溶解剤の使い方
松崎 靖司
1
,
大菅 俊明
1
1筑波大学臨床医学系・内科
pp.616-617
発行日 1986年4月10日
Published Date 1986/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220308
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胆汁酸溶解療法の背景
胆石はその保有率が約10%にもおよび,日常最も遭遇する頻度の高い消化器疾患の1つである.手術による摘出法が完成されているとはいえ,以前から非観血的に胆石を溶解できないかということは夢であった.ところがコレステロール胆石の生成機序の研究が進むにつれ,本症の患者ではコレステロール過飽和肝胆汁が生成されており,またコレスロールを溶存すべき胆汁酸プールが減少していることがわかった.このことから,1972年Dangingerら1)は,ガチョウの胆汁の主成分であるchenodeoxycholic acid(CDCA)を服用させ,初めて胆石溶解に成功した.一方,本邦において古くから"熊の胆"として親しまれてきたursodeoxy-cholic acid(UDCA)はCDCAの立体異性体であり,わが国においてCDCA同様に胆石溶解効果が認められた2).以後,世界各国においてCDCAおよびUDCAの治験が多数行われ,両胆汁酸の有効性と安全性が確認された.しかし一方,本療法には一定の限界があり,正しい症例の選択が必要であることも明らかとなった.
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