今月の主題 アルコール障害
治療上の問題点
内科外来での飲酒に関する指導について
重田 洋介
1
1国立療養所久里浜病院・アルコール症センター内科
pp.468-469
発行日 1986年3月10日
Published Date 1986/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220273
- 有料閲覧
- 文献概要
近年,アルコール消費量の増加に伴い,いわゆる酒(アルコール飲料)を飲む人の割合は,厚生省飲酒と健康に関する日米共同班(昭和60年,班長河野裕明国立療養所久里浜病院長)によると,男性の91%,女性の61%にまで増加し,「飲酒人口」は6,400万人に達しているとされ,また1日当たり日本酒相当量5合以上を毎日飲酒する,いわゆる「アルコール依存症」者は220万人に及ぶと報告され,社会問題として大々的にマスコミが取り上げている.また都民を対象とした調査では,日本酒換算で毎日2合以上飲む人は,40代で4人に1人に達している.さらに「酒をやめたい」,「量を減らさねばならない」と考えている人は38%であって,とくに50代では55%に及んでおり,多くの人が酒による健康障害を心配している.
従来「アルコーリズム」はアルコールてんかん,振戦譫妄,アルコール痴呆などのアルコール精神病と,異常酩訂,それにアルコール依存症を包括する,いわゆる精神科医のかかわる疾患群を意味していたが,しかし今やアルコールに関連した健康問題のうち,精神科固有の領域は一部にすぎず,従来から問題とされることが多かった肝障害のみならず,高血圧や心臓などの循環器疾患,糖尿病,消化性潰瘍,急性・慢性膵炎,痛風,中枢・末梢の神経疾患,など内科医がその治療に関与しなければならない機会は多く,また実際そうであるのが現実であろう.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.