今月の主題 めまいの臨床
めまい・平衡障害を主訴とする各種疾患
小脳萎縮症(脊髄小脳変性症)とめまい
福武 敏夫
1
,
平山 惠造
1
1千葉大学医学部・神経内科
pp.2608-2609
発行日 1985年12月10日
Published Date 1985/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220136
- 有料閲覧
- 文献概要
「めまい」は神経内科の外来でも比較的多い愁訴の一つであり,しばしば脳血管障害をはじめとする小脳〜脳幹系病変の重要な症候である.ただし,「めまい」といっても広くあいまいな概念であり,狭義の「めまい」,すなわち眼振を伴い,「回転感」や「物が流れてみえる」感覚を訴えとする"vertigo"の他に,姿勢保持機構・中枢性平衡障害による「ふらつき」,ことに「歩行時のふらつき」や脳幹網様体の一過性機能不全による「立ちくらみ」のような,回転感を伴わない"non-vertigo"まで含まれる1)ことが多い.これらの他にoscillopsia(動揺視)も「めまい」として訴えられることがある.
変性疾患である各種の小脳萎縮症(脊髄小脳変性症)でも時に「めまい」の訴えはあり,またいくつかの総説や教科書的著作においても,「めまい」を起こす疾患分類にあげられている.しかし,著者らの日常診療の経験では,小脳萎縮症の患者において,病歴上,「歩行時のふらつき」や「立ちくらみ」の訴えは多いが,それらの要素と区別するように患者に説明して問診すると,「めまい」の訴えは少ないように思われる.今回,当科自験例についてretrospectiveに病歴調査を行い,この点を確かめてみた.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.