臨時増刊特集 エコー法の現況
Ⅲ トピックス
76.超音波顕微鏡
田中 元直
1
,
大川井 宏明
1
1東北大学抗酸菌病研究所・電子医学研究部門
pp.2498-2503
発行日 1985年12月1日
Published Date 1985/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220112
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光学顕微鏡,電子顕微鏡につぐ第3の顕微鏡として,最近超音波顕微鏡が注目されるようになってきている.これは光学顕微鏡が光の回折収差を利用して拡大像を作り,電子顕微鏡では電子線の電子光学的性質を利用して拡大像を作って,微小領域における組織の形状,あるいは構造の可視化を主目的としているのに対し,超音波顕微鏡は組織のもつ物理的性質すなわち弾性や粘弾性の差を利用し,超音波の波長を短くすることによって,微小領域の構造を拡大像として表示するものであり,同時に組織のもつ物理的性質を定量的に計測できるという特殊性をもっているからである.
光学顕微鏡でも,染色法を用いて組織化学的に,特定の組成をもつ組織を着色し,特定の周波数の光を選択吸収させる方法で,化学的成分の識別を可能にしている.また電子顕微鏡ではX線分光器などと組み合わせ,元素分析や構造解析を行うことができ,物質の質的,ときには量的計測ができる.しかし,超音波顕微鏡で得られるような組織の物理的性質に関する情報を得ることは難しく,このような点に本質的な相異がある.生体組織の構造と機能についてはなお未知の領域,未解決の問題が多い.これらを解明していくためには,従来の光学顕微鏡や電子顕微鏡とは異なった方向から,異なった手法でアプローチしていくことが必要になる.その方法論の一つとして超音波顕微鏡が,医学の領域にも導入されてきている.
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