今月の主題 糖尿病診療の実際
診断
境界型例の取り扱い方
佐々木 陽
1
Akira Sasaki
1
1大阪府立母子保健総合医療センター・企画調査部
pp.988-989
発行日 1984年6月10日
Published Date 1984/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219059
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「境界型」のとらえ方
糖尿病の診断に関連する問題の一つに境界型例の取り扱いがある.糖尿病の診断のために,これまで内外で多くの診断基準が提案されてきた.わが国では,日本糖尿病学会の診断基準委員会が1970年に勧告した判定基準がいわゆる「学会基準」として広く用いられてきたが,1982年にはさらにWHOの新しい見解(1980年WHO基準)をふまえて本学会の新基準が公表されたのは周知のとおりである.ところが,これらの基準に共通していることは,糖代謝の「正常」な群と,定義によって「糖尿病」と分類される群との間に,そのどちらにも属さない中間帯が設けられていることである.この中間帯をWHO基準ではIGT(Impaired Glucose Tolerance)と呼び,学会基準では「境界型」としているが,要するにどちらにも分類できない糖代謝異常群を入れるために便宜的に設定したものである.ただし,その範囲は基準設定の考え方によって大きく異なってくる.たとえば,WHO基準と新旧学会基準を比較すると表のとおりで,旧学会基準の境界型にWHO基準のIGTを加えたものが今回の「境界型」であり,その範囲は旧基準より著しく広くなっている.
それでは,このような「境界型」に代表される糖代謝異常者をどのように取り扱えばよいかということが次の問題として浮かび上ってくる.
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