今月の主題 新しい栄養療法
各種疾患における栄養療法
炎症性腸疾患(IBD)の栄養療法
八尾 恒良
1
,
渕上 忠彦
2
Tsuneyoshi Yao
1
,
Tadahiko Fuchigami
2
1福岡大学医学部・第1内科
2九州大学医学部・第2内科
pp.56-57
発行日 1984年1月10日
Published Date 1984/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218855
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潰瘍性大腸炎やCrohn病などの,いわゆる炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)では,炎症の全身的影響,出血,下痢,蛋白漏出,吸収障害,さらにはビタミンや微量元素の欠乏,あるいは経口的食物摂取量の減少のために,窒素バランスは負となり,低栄養状態にある患者が多い.そのために,外科的治療が制限されることもあり,完全静脈栄養(TPN)や経腸栄養(ED)などの栄養療法は,最初,術前,術後の栄養管理を目的としたadjunctive therapyとして用いられていた.しかし,これらの患者の中に,一般状態の改善のみならず,病勢が寛解するものがみられたために,IBDの急性増悪期における寛解を目的とした,primary therapyとして栄養療法が試みられるようになった.
IBDに対する欧米での栄養療法の評価は必ずしも一定せず,ことにその長期予後を有意に変えるかどうかについては,むしろ否定的意見が強い.しかし,欧米と本邦では医療制度の差異もあり,栄養療法に対する正当な評価を行うには未だ問題が残されているのが現状であろう.
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