臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
IX.代謝・栄養障害
問題となるケースの治療
177.最近みられるビタミン欠乏症
橋詰 直孝
1,2
Naotaka Hashizume
1,2
1帝京大学医学部・第1内科
2帝京大学医学部・中央検査部
pp.2486-2487
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218718
- 有料閲覧
- 文献概要
ビタミン欠乏症の現況1)
今日では栄養欠乏症よりも過剰症が問題とされている時代であるが,ビタミン欠乏症としてB1欠乏症である脚気,ウェルニッケ脳症,B2欠乏症,ニコチン酸(ナイアシン)欠乏症であるペラグラ,B6欠乏症,内因子障害に伴うB12の吸収障害によっておこる悪性貧血,C欠乏症である壊血病,A欠乏症,D欠乏症であるクル病(小児の場合)および骨軟化症(成人の場合),さらにビタミン依存症であるB1依存性楓糖尿病,B6依存症,D依存症,先天性代謝異常に基づくと考えられている葉酸吸収不全,Hartnup病,K依存性出血素因などが今日でも存在している.
これらの疾患のうち,食事中のビタミン不足によりおこる一次性ビタミン欠乏症で頻度の高いのは脚気,ペラグラ,ウェルニッケ脳症である.これらの3つの症患の誘因として共通しているのはアルコールである.わが国のアルコール需要量が急増している今日,これらの疾患は無視できない.昭和49年頃脚気が再燃した当初,まさかいまどき脚気がと思い,他の疾患を考えていたし,ウェルニッケ脳症やペラグラは中枢神経障害を来たすので,単にアルコール性精神病として片付けられていた症例を経験した.ビタミン欠乏症は診断がつけば治療は容易である.すなわち,ビタミン欠乏症の治療のポイントは診断をつけることである.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.