臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
IV.循環器疾患
問題となるケースの治療
75.自覚症状のない運動負荷心電図陽性例
村山 正博
1
Masahiro Murayama
1
1関東逓信病院・循環器内科
pp.2244-2245
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218616
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症例1
35歳男性.1983年6月初め頃カバンをもって歩いたとき前胸部痛を感じ,5〜10分位で自然に消失したという病歴がある.6月17日の明け方,前胸部に痛みがあり目がさめ,また同時に咽頭部の乾燥感を感じている.理学所見上,血圧106/74,その他特記すべきことなし.血液生化学GOT 212,CPKピーク値1,548,白血球15,700,と壊死徴候をみとめている.
図1に安静および運動負荷心電図を示す.安静心電図ではII,III,aVFに深い異常Q波をみとめ,また同誘導に陰性T波をみとめている.運動負荷試験は上述の症状があった1か月後に行われている.図に示すようにBruce III度の途中まで行ったが,息切れ,胸痛なく,ST下降がV5にて3mmもあり,ST下降を運動中止徴候として負荷試験を中止している.トレッドミルを用いた運動負荷試験は異なった日に3回行っているが,いずれにおいても全く無症状で同じ程度のST下降を示している.運動負荷タリウムシンチグラフィーではST下降の出現に一致して下側壁に広く欠損像を示し,回復後再分布をみている.また運動負荷RIアンジオ上,Section 1,5に壁運動異常が発生した.CAGではRCA3に75%,LAD 6,7に75〜90%,LCX13に90%の狭窄をみとめたいわゆる3枝病変を示した.
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