臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
III.呼吸器疾患
特殊な治療法
63.ECMOによる呼吸不全の治療
寺崎 秀則
1
Hidenori Terasaki
1
1熊本大学医学部・麻酔科
pp.2212-2213
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218604
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症例
患者は生来健康な19歳の女性(身長158cm,体重50kg)である.昭和57年6月10日23時頃,交通事故で乗用車のハンドルに胸部を強打し,肺挫傷による肺水腫のため急性重症呼吸不全となり,11日16時熊本大学集中治療部へ入院した.
アプロチニン(トラジロール®)100万単位i. v.,メチルプレドニゾロン(ソルメドール®)30mg/kg i. v. モルヒネ(患者が苦しがる時鎮痛鎮静をかねて)10mg i. v.,フロセミド(ラシックス®)20mg i. v. 投与を行うとともに,呼気終末に5〜20cmH2Oの陽圧PEEP(positive end-expiratorypressure)をかける持続陽圧換気CPPV(continuous positive pressure ventilation)の機械的人工呼吸で肺ガス交換を補助した.またドパミン(イノバン®)5〜25ug/kg/min i. v.,新鮮凍結血漿輸血により循環の維持をはかった.しかし,蛋白濃度5.4g/dlの泡沫状の分泌物が気道内から噴出し続け,低酸素血症は改善しなかった.11日20時頃には全身皮下気腫合併のためPEEP圧を下げざるをえなくなり,機械的人工呼吸を十分行えなくなった.12日朝8時頃に低カリウム血症(2.88mEq/l)のため心室性頻脈から心停止を生じた.
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