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はじめに
extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)とは,心肺補助を目的とした体外循環管理法の総称である.その目的によって肺ECMO(pulmonary ECMO),心ECMO(cardiac ECMO),体外循環式心肺蘇生(ECPR)に分けられる.また,脱血カニュレと送血カニュレの挿入場所によって静脈脱血・静脈送血ECMO(VV ECMO),静脈脱血・動脈送血ECMO(VA ECMO),動脈脱血・静脈送血ECMO(PECLA)に分類される.呼吸補助目的の肺ECMOとしてはVV ECMOが使われることが多いが,VA ECMO,PECLAを使用することもある.わが国では,循環補助目的の心ECMOおよび心肺蘇生目的のECPRとしてのVA ECMOが経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS)と呼ばれ,多くの施設で利用されている.
ECMOが重症患者の体外循環補助法として用いられ始めたのは1970年代のことであり,1972年にHillらによって初めて手術室外で体外循環補助法を行った症例が報告された.この症例は24歳男性で,外傷後のARDS(急性呼吸促迫症候群)に対し肺ECMOとしてのVA ECMOを75時間施行し,回復した1).こうして重症患者に対するECMOの効果が期待されたが,NIH主導で行われた多施設RCT(ランダム化比較試験)の結果によって,成人の重症呼吸不全ではその有効性が疑問視されることとなった2).一方,新生児と小児の呼吸不全に対してはBartlettが良好な成績を残し,その有効性を示した3).こうした歴史的背景のなか,ECMOは主に新生児や小児の呼吸不全に対して施行されてきた.その後,重症循環不全に対してや心肺蘇生の手段として成人・小児ともに使用されるようになったが,依然として成人の呼吸不全に対してはあまり使用されることはなかった.
成人の重症呼吸不全に対して再びECMOが注目されたのは,2009年に発表されたCESAR trialである.68施設から180人がエントリーされ,従来の治療継続か,ECMOセンターへの搬送のいずれかに無作為に割り付けられた.Primary outcomeは6カ月後の重篤な障害がない生存であり,治療群で63%,コントロール群で47%(p=0.03)という結果であった4).そして偶然にもこの研究が発表された2009年に,H1N1インフルエンザの世界的なパンデミックが起こった.そのためH1N1インフルエンザに罹患した成人患者に対して,より多くのECMO治療が行われ,有効な治療として報告された5).こうして世界的に成人の呼吸不全に対するECMOは再び脚光を浴びることとなった.
本稿では,主に成人の重症呼吸不全に対するVV ECMOについて述べる.
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