今月の主題 内科医に必要な泌尿器科の知識
治療とその考え方
膀胱炎症状
小川 秋実
1
Akimi Ogawa
1
1信州大学医学部・泌尿器科
pp.2526-2527
発行日 1982年12月10日
Published Date 1982/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218072
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膀胱炎では排尿時,とくに排尿の終わりごろに尿道に痛みを感じ(排尿痛),尿意を頻繁に生じて排尿回数が多くなる(頻尿).ひどくなると排尿後も尿意が消えず,絶えず強い尿意が続く(尿しぶり).排尿痛が軽度のときは排尿後不快感として訴えることもある.このような症状を膀胱炎症状(または膀胱刺激症状)と称する.
排尿痛と頻尿は,膀胱または尿道が炎症,結石,腫瘍などによって刺激されるために起こる症状である.すなわち,膀胱炎症状は膀胱炎以外の多数の疾患で起こるので,膀胱炎症状があっても必ず膀胱炎であるとはいえない.また,本当の膀胱炎であっても,化学療法で簡単に治る急性単純性膀胱炎のほかに,腫瘍,結石,結核などが基礎にあるために生じた続発性膀胱炎のこともある.この場合は基礎疾患を治療しないと膀胱炎症状は改善しない.したがって,膀胱炎症状があれば安易に膀胱炎と診断して化学療法だけを行うことは重大な誤りであり,場合によっては基礎疾患が進展して重篤な転帰に至ることもある.正しい鑑別診断が必要なことはいうまでもない.
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