今月の主題 血清リポ蛋白の異常
リポ蛋白異常と各種疾患
糖尿病
赤沼 安夫
1
Yasuo Akanuma
1
1東京大学医学部・第3内科
pp.824-826
発行日 1982年5月10日
Published Date 1982/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217746
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糖尿病におけるリポ蛋白代謝異常を考えるうえで,最も注意を喚起したい点は,糖尿病という疾患が成因論上も,また臨床像も多様であり,したがってこれら多様性が脂質代謝のうえでも,直接的,間接的に多様な影響をもたらすことになることである.
糖尿病代謝の背景をなすものは,インスリン作用の不足状態である。インスリンの主要な標的細胞は,肝細胞,筋細胞,および脂肪細胞であるが,とくに脂肪細胞,肝細胞におけるインスリン作用の不足状態が細胞内の脂質代謝,および血漿リポ蛋白を含めて細胞外液中の脂質代謝異常の成因論上重要である.インスリン作用が低下すると,脂肪組織ではcyclic AMPが上昇し,蛋白活性化酵素の活性化を経てホルモン感受性リパーゼが活性化をうける.この結果,細胞内に貯蔵されていたトリグリセライドは加水分解をうけて,FFA,グリセロールとして血漿中に放出される.
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