特集 リポ蛋白・脂質代謝と臨床検査
11 後天性脂質代謝異常
2.糖尿病
高橋 慶一
1
,
村勢 敏郎
1
,
赤沼 安夫
2,3
Keiichi TAKAHASHI
1
,
Toshio MURASE
1
,
Yasuo AKANUMA
2,3
1東京大学医学部第三内科
2朝日生命糖尿病研究所
3朝日生命糖尿病研究所附属丸の内病院
pp.1547-1552
発行日 1985年11月1日
Published Date 1985/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917579
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はじめに
糖尿病には高頻度に高脂血症が伴い,これは糖尿病に合併しやすい動脈硬化性疾患の主要な危険因子の一つと考えられている2,3).高脂血症の頻度は未治療糖尿病患者ではおおよそ30〜40%とされているが,報告により,また糖尿病の病態によりかなり異なり1),血漿脂質異常の表現型も多彩である4,5).糖尿病の治療により高脂血症は正常化し頻度が大きく減少するが,血糖の面からは糖尿病が十分よく治療されているにもかかわらず血漿脂質異常が存続する例も多い.また,空腹時の血漿脂質値が正常であっても血漿リポ蛋白に質的異常が認められることもある.さらに,食後の血漿脂質に異常が認められるという報告もある.糖尿病における血漿脂質代謝異常については,空腹時の血漿脂質濃度だけではなく,アポ蛋白組成をも含めたリポ蛋白分画としての変化に注目する必要がある.
本稿では,これらの点を考慮しながら糖尿病における血漿脂質代謝の異常についてもまとめてみたい.
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