今月の主題 ウイルス肝炎のトピックス
慢性B型肝炎の治療
免疫抑制療法
太田 康幸
1
,
日野 寿子
2
Yasuyuki OHTA
1
,
Hisako HINO
2
1愛媛大学医学部・第3内科
2愛媛大学医学部・内科
pp.1560-1562
発行日 1981年9月10日
Published Date 1981/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217326
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慢性B型肝炎の治療のなかで免疫抑制療法が占める位置は,今日なお賛否両論相半ばしているといえよう.B型肝炎ウイルス関連抗原と抗体系の測定法が確立され,とくにHBe抗原抗体の測定がRadioimmunoassay法の開発により実用化したことで,血中で測定されるDNA polyrnerase活性とHBe抗原とがきわめて密接に関連していることが明らかとなり,肝細胞内でのHBウイルス増殖の指標として用いうることが認められるようになったことは周知のとおりである.HBe抗原陽性からHBe抗体陽性へ変化する現象,いわゆるseroconversionが起こることを観察することは,B型肝炎の治療における原因療法に直接つながることであり,注目を引くところである.
一方,慢性肝疾患に関する免疫病理学的研究においても,リンパ球subsetでの変化,免疫遺伝学的な研究,なかでもHLA系についての研究の進歩は,免疫抑制療法の意義について新たな疑問を投げかける結果となり,治療の目標としては,免疫"抑制"ではなく,免疫"調整"であるべきだとの意見が出て,レバミゾールの試験的な投与などの試みも現われたが,なお実用化し,定着するに至ってはいない現状である.
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