今月の主題 臨床栄養学—最近の進歩
人工栄養法—経静脈栄養法と経腸栄養法を中心として
肝不全のある場合
武藤 泰敏
1
,
高橋 善弥太
1
Yasutoshi MUTO
1
,
Yoshiyata TAKAHASHI
1
1岐阜大学医学部・第1内科
pp.626-627
発行日 1981年4月10日
Published Date 1981/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217124
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非代償性肝硬変患者に高蛋白食を処方する際の最大の難問は,肝性脳症の誘発,すなわち蛋白不耐症であり,一般に1日20〜25g以下に食事蛋白を制限せざるをえない.
ところが最近表に示すような特殊組成アミノ酸製剤1)(Fischer液と略称)が開発され,わが国でもこれに類似した組成をもつ製剤(GO-80およびTHF)が試用できるようになった.このFischer液の投与によって,肝性脳症が過去のどの治療法に比べても速効的に改善され諸家の注目を浴びている.その機序の詳細はなお十分に明らかではないが,Fischer液中に含まれる分枝鎖アミノ酸(BCAA)が血中アミノ酸のインバランスを補正し,脳内セロトニン,ノルエピネフリン代謝を正常化するためと推定されている2,3).この新知見はとりも直さず,蛋白不耐性を誘発することなく,1日40〜80gのBCAAを主体としたアミノ酸を補給できることを意味している.したがって,PatekとPost(1941)が提唱した高蛋白・高エネルギー食という古典的療法も,あらためて食事蛋白の質つまりアミノ酸栄養という新しい視点から見直さなければならない.
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