図解病態のしくみ 消化器疾患・14
大腸憩室症(1)—病態生理
松枝 啓
1
Kei MATSUEDA
1
1国立病院医療センター・消化器内科
pp.269-273
発行日 1981年2月10日
Published Date 1981/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217045
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大腸憩室症(Diverticular Disease of the Colon)は20世紀の疾患ともいわれ,欧米ではとくに近年その頻度が増加しており,最近の調査では60歳以上の約1/3に大腸憩室症が存在すると報告されている.この主な原因としては,後述するように食物の調理方法の変化により線維の少ない低残渣食を摂取するためと考えられている.
一方,大腸憩室症は人種や地域により発生頻度や発生部位により著しい差があると考えられてきた.すなわち,欧米では左側型憩室,とくにS状結腸憩室が多いのに対し,わが国では反対に右側憩室が多く左側憩室は少ないとされてきた.しかし,欧米に定住した日本人にも年とともに左側憩室の頻度が増加するという事実があり,また最近の本邦の報告でも,高年齢者では左側結腸憩室のほうが右側結腸憩室よりも高頻度であり,欧米型と同様の内輪筋の肥厚を特徴とする筋層異常が認められたと報告されている.とくに,わが国においても食生活の欧米化が起こり低残渣食を摂取することが習慣化した現在,欧米型の左側結腸憩室症が高頻度に起こる可能性は大であり,さらに,この左側型は一名「左側の虫垂炎」といわれるほど頻回に憩室炎を起こし臨床上しばしば問題になるため,ここでは主に左側型大腸憩室症についてその病態生理を述べ,それに基づく合理的治療法について検討したい.
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