臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
XIV.女性性器疾患
急性子宮付属器炎 VS 尿路結石症
古谷 博
1
Hiroshi FURUYA
1
1順天堂大学医学部・産婦人科
pp.2160-2161
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216921
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なぜ鑑別が問題となるか
尿路結石症は,腎盂,腎杯などに尿の成分が析出し,これが核となって尿酸塩,シュウ酸塩,リン酸塩などの結石を作るもので,尿流の停滞,代謝の異常などが誘因となるが,原因不明のもののほうが多い.またサルファ剤や副腎皮質ステロイドの長期投与,長期臥床も原因になる.結石の存在部位によって腎結石,腎盂結石,これが下流におちた尿管結石,膀胱結石,尿道結石にわけられるが,急性子宮付属器炎と鑑別が問題になるのは尿管結石症である.
それは両疾患とも比較的に若年ないし中年者に多く,急激に下腹部の疝痛様疼痛があり,疼痛とともに嘔気,嘔吐を伴うことが多いからである.また疼痛が下腹部だけでなく,しばしば上腹部,外陰,大腿にまで放散し,嘔気,嘔吐のため食事がとれず全身の脱力が強くなる.時には癌痛でなく鈍痛のこともあり,波動的に消長して長期間続くこともある.また両者とも血尿が痛みとともにみられることがあり,顕微鏡的血尿から肉眼的血尿まで程度はまちまちで,性器出血をみることもある.
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