増刊号 産婦人科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
産科編
VII 偶発合併症妊娠
膀胱炎/腎盂腎炎/尿路結石症
香川 秀之
1
1関東労災病院産婦人科
pp.311-314
発行日 2014年4月20日
Published Date 2014/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103747
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疾患の概要
膀胱炎
妊娠時には,上行性感染による尿路感染症の頻度が増加する.膀胱炎は,排尿時痛,頻尿,残尿感,尿混濁などの臨床症状および尿沈渣検査で膿尿,細菌尿を認めることで診断する.また,尿中細菌数が105/mL以上で症状を認めない無症候性細菌尿の場合も,妊婦においては高率に膀胱炎,腎盂腎炎に移行するため,治療の対象である.原因菌の多くは,大腸菌である.
腎盂腎炎
無症候性細菌尿や膀胱炎の状態が悪化し,上部尿路に感染が広がると,腎盂腎炎を発症する.症状は,発熱,悪寒,倦怠感,腰背部痛のほか,側腹部痛,悪心・嘔吐など消化器疾患と紛らわしいことも多い.診断は,臨床症状および肋骨脊柱角の叩打痛,尿沈渣での白血球の増加,細菌の増加,血液検査での白血球増加,炎症反応の上昇などで行う.膀胱炎と同様,原因菌の多くは大腸菌であるが,腸球菌,クレブシエラ,プロテウス,ブドウ球菌なども原因菌となる.妊婦の腎盂腎炎は,敗血症を起こすことも稀ではないため,治療に先だって,尿とともに,血液の細菌培養検査を行うことが望ましい.
尿路結石症
妊娠中の尿路結石症の発症は1,500~3,000妊娠に1例とされ,比較的稀な合併症である.症状は,腰背部・側腹部の疼痛,血尿,悪心・嘔吐などで,妊娠中の診断は超音波検査による腎盂拡張・尿管拡張の有無,尿路内結石の同定が第一選択となる.妊娠中は生理的な尿管拡張があるため,経過観察による自然排石が期待できることが多い.
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