臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
IX.血液疾患
良性単クローン性免疫グロブリン血症 VS 腫瘍性単クローン性免疫グロブリン血症
河合 忠
1
Tadashi KAWAI
1
1自治医科大学・臨床病理学
pp.2050-2051
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216872
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なぜ鑑別が問題となるか
この両者に共通していることは,血液または尿中の単クローン性免疫グロブリン(M-蛋白)が検出されることである.前者は,M-蛋白産生細胞の増殖が反応性または良性であるのに対して,後者は腫瘍細胞でM-蛋白が産生されている.良性M-蛋白血症は,多くは基礎疾患があって二次的に合併しているか,本態性に認められる.腫瘍性M-蛋白血症をきたす代表的な疾患が多発性骨髄腫であり,稀に原発性マクログロブリン血症,H鎖病がある.したがって,実質的には良性M-蛋白血症と多発性骨髄腫との鑑別ということになる.ただ,多発性骨髄腫患者の2〜3%くらいにM-蛋白血症を伴わないものもある.多発性骨髄腫は,一口にいって,形質細胞の腫瘍性増殖によって骨破壊をきたす病態と定義しうる.
両者の鑑別が重要である理由としては,前者の場合M-蛋白血症そのものに対する治療は必要でないのに対して,後者ではただちに適切な治療が必要となる.
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