今月の主題 慢性肝炎をめぐる諸問題
成因からみた慢性肝炎
自己免疫性慢性肝炎
蓮村 靖
1
,
大宮司 有一
2
Yasushi HASUMURA
1
,
Yuichi DAIGUJI
2
1東京医科歯科大学医学部・第2内科
2東京医科歯科大学医学部・内科
pp.882-883
発行日 1980年6月10日
Published Date 1980/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216553
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はじめに
慢性活動性肝炎は,進行性で破壊性の肝炎が持続しつづけるという性格(self perpetuationという)をもつ難治性の肝疾患である.この慢性活動性肝炎には,しばしば液性ならびに細胞性免疫異常が認められるため,本症の成立すなわち上に述べた性格の形成に,免疫異常が関与しているとする考え方が広く受け入れられている.
慢性活動性肝炎の一部の症例には,高γグロブリン血症や種々の自己抗体(抗核抗体や抗平滑筋抗体,ときにはLE細胞現象など)が認められることがある.ところがこれらの症例では,HBs抗原の存在をみることは比較的まれである.そこで,このような自己抗体陽性の慢性活動性肝炎は,SLEなどの自己免疫疾患の場合と同じように,肝に対し自己免疫状態が成立しており,これが疾患の本態をなす肝炎,すなわち自己免疫性慢性肝炎であるとする考え方が近年発表され,B型肝炎と区別して病態を把握しようという意見が述べられてきている.事実本症では,B型肝炎と異なり,肝細胞膜自己抗体(liver membrane autoantibody:LMA)が特異的に証明され,この抗体に対する抗原をめぐる免疫現象こそが本症を特徴づけているとする学者がいる1).
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