今月の主題 慢性肝炎をめぐる諸問題
経過と予後
慢性肝炎に移行しやすい急性肝炎
佐々木 博
1
,
井上 恭一
3
,
市田 文弘
2
Hiroshi SASAKI
1
,
Kyoichi INOUE
3
,
Fumihiro ICHIDA
2
1富山医科薬科大学医学部・第3内科
2新潟大学医学部第3内科
3富山医科薬科大学医学部・内科
pp.856-858
発行日 1980年6月10日
Published Date 1980/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216546
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はじめに
急性ウイルス肝炎の予後に関連する因子としてはウイルス側,および個体側の要因があげられている.前者については本症の主要な起因ウイルスであるA型肝炎ウイルス,B型肝炎ウイルスおよび非A・非B型肝炎ウイルスのうち,A型肝炎ウイルスによるものでは慢性肝炎への移行はないと考えられ,また非A・非B型肝炎ウイルスでは遷延化,慢性化率の高いことが指摘されている.一方B型肝炎ウイルスでは初感染例の多くは治癒すると推測されている.個体側の要因としては,高齢者に遷延化,慢性化率の高いことが報告されており,またウイルス一個体間の関連では,液性抗体,細胞性抗体の反応様式が急性肝炎の病型,慢性化に関わる可能性が指摘されている.
形態学的には,本症の典型例に認められる肝細胞壊死の程度は,単細胞壊死ないし巣状壊死が主体であるが,ときに帯状壊死を伴い,さらに帯状壊死相互間の壊死性連絡(bridging necrosis)を認めることがあり,後者の特徴を示すものは,Subacute hepatitis1),Subacute hepatic necrosis2)とよばれてきた.
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