臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
VI.肝・胆道・膵疾患
再燃再発を防ぐための維持療法と社会復帰
130.無症状の慢性肝炎
井上 恭一
1
Kyoichi Inoue
1
1富山医科薬科大学・第3内科
pp.2378-2379
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218671
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慢性肝炎では通常著明な自他覚症状をみることは少なく,自覚的に軽度の倦怠感を訴える程度で,理学的にも肝腫脹をわずかに認めるくらいのことが多い.しかし肝生検による肝組織像をみると門脈域の拡大,線維化とリンパ球をはじめとする炎症性細胞の浸潤,piecemeal necrosis,小葉内の壊死巣などがみられ,これらは程度の変動はあるが持続的に存在している.いい換えれば組織形態学的には常に再燃,再発をくり返しているわけであり,かかる病変を恒常的に静止状態におくことは不可能と考えられる.一方,慢性肝炎の経過中に強度の倦怠感,食思不振,ときには黄疸など急性ウイルス性肝炎様の症状が加重し,検査成績ではGOT,GPTが300単位以上の上昇を示し,組織学的にも肝細胞の変性壊死所見が著明にみられることがあり,かかる急性増悪後には肝病変は進行することが多い.これとは逆にB型慢性肝炎の中には急性増悪をきっかけとしてHBe抗原のHBe抗体への転換(seroconversion),ときにはHBs抗原の消失をみることもある.したがって慢性肝炎の治療に当ってはこれらの点を十分考慮する必要がある.ここでは具体例を呈示して慢性肝炎の病変の進行を抑える一般的治療法についてのべる.
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