今月の主題 肺の炎症性疾患—最近の動向
反応性肺炎
放射線性肺炎
吉田 稔
1
,
関 雅彦
1
Minoru YOSHIDA
1
,
Masahiko SEKI
1
1福岡大学医学部・内科
pp.368-370
発行日 1980年3月10日
Published Date 1980/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216443
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はじめに
肺や胸郭内諸臓器の悪性腫瘍,たとえば悪性リンパ腫,食道癌,縦隔腫瘍等に対して,60Co,ベータートロン,リニアックなど高エネルギー放射線による放射線療法が今日しばしば行われている.それに伴い放射線照射による肺組織への反応,障害が生ずるが,これが一般に放射線性肺炎,radiation pneumonitisと呼ばれている.これについての最初の報告は1921年Grooverらによりなされたが,その後もこれに関連しての実験的,臨床的報告が多数認められる.放射線の組織への影響は,基本的にはRubin,Casarettらも指摘するごとく,放射線の組織吸収に伴い,組織内に有機過酸化物を生ずること,さらに遺伝物質であるDNAに影響を及ぼすこと,蛋白質や多糖類等の非遺伝物質への放射線の障害により,細胞膜の透過性の亢進をもたらすことなどから,放射線照射が肺の形態的変化,つまり線維化や機能的障害の原因となる.要するに,放射線性肺炎は腫瘍に対する放射線治療上の副作用として発症するもので,臨床的には放射線の種類,エネルギー量と共に,その影響をうける個体側の状態,年齢,胸壁の厚さなどが発症ならびにその障害程度を左右する重要な要因としてあげられる.
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