今月の主題 肺の炎症性疾患—最近の動向
抗酸菌
粟粒結核の現状
岡安 大仁
1
,
児島 克美
2
Masahito OKAYASU
1
,
Katsumi KOJIMA
2
1日本大学医学部・第3内科
2日本大学医学部・内科
pp.340-341
発行日 1980年3月10日
Published Date 1980/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216432
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はじめに
粟粒結核は胸部X線上びまん性の粟粒大の粒状影を呈し,少なくとも2臓器以上に粟粒大の結核結節を認める疾患であり,乾酪病巣から血流中に入った結核菌が豊富な血流を有する毛細血管床をもつ臓器に侵入し,その結果として多臓器にわたって毛細血管床に塞栓をつくり,播種性の結核結節を形成することによって惹起される.化学療法以前には本症の全てが死亡したが,優れた抗結核剤の出現により結核症が著しく減少してきたのにつれ,粟粒結核の臨床像も過去20数年間に大きな変化を認めるにいたっている.とくに子供の初感染結核の合併症としての死亡率の高い粟粒結核は減少し,中高年層の陳旧性初感染巣の再燃に伴う晩期播種型が増加している1).わが国でも本症の変貌をとらえ,第48回日本結核病学会総会(1973年)のシンポジウムで「最近の粟粒結核症」が取り上げられたが,勝呂2)は人口動態統計,日本病理剖検輯報,全国アンケート調査例ともに,最近発生頻度の増加がみられ,577例の調査例では若年者(20〜24歳)に,剖検輯報例では壮・老年者(40歳以上)に高率であったとしている.このように発症年齢の高齢化に伴い定型的な病態を呈する症例が少なくなり,剖検によって初めて播種性結核結節を検出し,本症と診断されるような,いわゆるcryptic typeの粟粒結核が増加している.
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