私の失敗例・忘れられない患者
粟粒結核症の1例
笹村 義一
1
1自衛隊中央病院内科
pp.893
発行日 1976年6月10日
Published Date 1976/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206629
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結核性疾患の著しい減少と共に,本疾患に対する関心も薄れつつあるのではないかと心配されている.小生自身,結核病棟に勤務し,結核症には十分注意をはらっているつもりであったし,また粟粒結核症も2例経験していた.しかし,最近診療した粟粒結核症においては,これら2症例とは異なり,胸部レントゲン像が比較的はっきりする以前に,心包炎をもって発症したために,当初粟粒結核否定説を強硬に主張し,極めて恥かしい思いをした.
血行散布性結核症に関しては,cryptic typeと呼ばれる症例が注目され,胸部レントゲン像に異常を示さない症例などが存在する事実も既に知られているのであり,小生もその多彩さは観念的には理解していたつもりであった.しかし,実際面においては,自分自身の些細な経験にこだわり過ぎて失敗し,自分の結核症に対する理解の未熟さ,関心の浅薄さを痛烈に思い知らされた1例であった.
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