新しい栄養学の知識
生体リズムと栄養
林 伸一
1
Shin-ichi HAYASHI
1
1慈恵医科大学・栄養学
pp.136-139
発行日 1980年1月10日
Published Date 1980/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216384
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はじめに
生体のはたらきの中には,一定の周期でリズミカルな変動をくり返すものが多い.心拍動や呼吸のような秒・分単位の周期のものから,睡眠と活動のような日周期,女性の性周期にみられる月周期,さらに開花や冬眠のような年周期の現象まであって,このようなリズミカルにゆれうごく動態こそ生命の本質であるとも考えられるのである.受精から発達,老化を経て死に至る個体の加齢現象も,種の営みという視点からみればリズムとみなすこともできる1).
1日を周期とするリズムは日周リズム,あるいは英語のサーカディアン・リズムcircadian rhythmを直訳して概日性リズムと呼ばれる.circadianのcircaはおよそ,dianは日の意味である.リズムのなかで最も広くみられ,かつ研究も進んでいるのは日周リズムである.それは,このリズムが,地球の自転による昼夜という環境条件の劇的な周期的変動のもとで生活する生物が長い進化の歴史の過程で獲得してきた適応的機能のあらわれであることを考えれば容易に理解できよう.以下,この稿では日周リズムに限って話を進めるので,単にリズムといえば日周リズムを指すものと思っていただきたい.
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