今月の主題 甲状腺疾患のすべて
臨床的アプローチ
原発性甲状腺機能低下症の治療
粘液水腫昏睡
畔 立子
1
,
宮井 潔
1
1阪大・中検
pp.1384-1385
発行日 1975年8月10日
Published Date 1975/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206182
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はじめに
粘液水腫昏睡は,長期にわたり治療を受けずに放置した甲状腺機能低下症の患者の終末像であり,症状の増悪と昏睡をきたす重篤な病型である.
英米では,1879年にOrdが低体温と昏睡を生じた粘液水腫の例を最初に記載しており,1963年にはForester1)は自験例を含め1911年以降の77例を集め分析している.本邦においてはほとんど記載がなく,最近の報告例5)についても,甲状腺機能低下の確定になお問題が残っているようである.筆者らも自験例はないので,以下文献的に考察をすすめたい、粘液水腫昏睡は一般には中年以後の女性で全身性血管硬化症,とくに冠動脈硬化症のある老人に多く,寒冷な季節に発症をみている。1956年以降は3,5,3'-l-triiodothyronine(T3)の使用により生存例も報告されるようになった.しかしその死亡率はなお高く,予後不良であるので,保険医療が普及し,機能低下症の診断・治療法が確立されている現今では,その発症は少ないとはいえ,甲状腺機能低下症症例が増加傾向にある現在,昏睡患者に遭遇した場合は注意して診察すべき疾患である.
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