今月の主題 酸塩基平衡の実際
酸塩基平衡異常の臨床・その他
嘔吐と下痢
和田 孝雄
1
1慶大内科
pp.1502-1503
発行日 1979年10月10日
Published Date 1979/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216080
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混乱とその背景
従来の教科書的知識に従って,嘔吐と下痢の酸塩基平衡を説明せよといわれたら,「嘔吐は代謝性アルカローシスを起こし,下痢は代謝性アシドーシスを起こします」ということでおしまいにするのが最もすっきりしているであろう.しかし,それでは物足りないから,病態生理をより科学的に論ぜよということになると,にわかに話はむずかしくなってくる.すでにこの領域では,医学独特の奇妙な論理が一般に浸透しており,"科学的理解"を妨げているからである.そこで,以下のごとく,問題をいくつかの面にしぼって整理してみよう.
第1に,図1に見るごとく,嘔吐によって失われる液は酸(水素イオン)を多く合んでおり,下痢で失われる液にはアルカリ(水素イオンを中和するもの)を多く含んでいる.したがってこの面からいうと,嘔吐ではアルカローシス,下痢ではアシドーシス(いずれも代謝性)を生ずることになる.ここで,ともすると固定酸が失われたからどうのというような説明が持ち込まれるが,これは無視してよい.
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