特集 新しい高齢者観と保健婦活動
平成の老人観
大田 仁史
1
1茨城県立医療大学
pp.438-441
発行日 1997年6月10日
Published Date 1997/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901583
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老人像と老人観
老人に個人差が大きいことは知られている。したがって,かつて有史にないほどの長命を得た平成の老人の個人差が,かつてないほど大きいであろうことは想像に難くない。それは体力,知力においてしかり,考え方,価値観においてしかりであろう。植物状態の寝たきり老人がいる一方で,90歳を越えて短距離の世界記録に挑戦する元気老人もいる。また,痴呆老人が社会問題になる一方で,老いてなお矍鑠と第一線の仕事をこなす老人も多い。そのように考えると,1つに括って平成の老人像を語ることは容易ではない。ただ言えることは,いつの時代もそうであろうが,老人が比較的若い時代,すなわち,生物としての個人差があまり大きくない時期に受けた影響というのは共通した部分として残っているのではないか。すなわち,平成の老人で言えば,駆け抜けた青春や青年の時期が戦時中であり,戦後の混乱の時期であったという,その影響である。そこを切り口にして,老人の心象を辿るのは1つの手法といえるかもしれない。
さて,老人観となると,これはその時代のマジョリティーである若い世代の価値観がみる老人の姿,存在の意味であるから,それこそ時代とともに変わる。
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