臨床医のための心の科学
精神医学的立場からみた人工透析療法
平山 正実
1
1自治医大精神医学
pp.1380-1381
発行日 1979年9月10日
Published Date 1979/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216052
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はじめに
最近,日本において腎不全の患者を対象として行われる血液透析療法は,年々増加の傾向を示しつつある.ちなみにわが国の慢性人工透析患者数は,昭和43年にはわずか215名であったものが,10年後の昭和53年には2,700名(推定)に達したもようである(人工透析研究会調べ).そしてこのような透析技術の発達によって,以前は短期間のうちに死亡していった重篤な腎疾患患者が長期間生命を維持することができるようになった.このようなことがら自体は現代の科学技術のひとつの成果として評価されるべきであろう.事実この療法によって多くの患者は社会復帰することができるようになった.しかし,透析療法を受けるものは,一生涯にわたって機械装置に依存しなければならないため,心身共にさまざまな影響を被ることが明らかになりつつある.そのなかで精神的葛藤に伴う諸問題は,とくに深刻である.たとえば長期間人工透析を受けた患者の中には,性格的な歪みが出てきたり,行動異常や精神・神経症状が出現するものが少なくない.そして,臨床場面においてこのような事実にしばしば遭遇する医療従事者の間から,かれらに対して精神医学的な面からケアを行う必要性が叫ばれている.
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