今月の主題 内科医に必要な精神科の知識
よく遭遇する症候
体臭
宮本 忠雄
1
,
吉野 啓子
1
1自治医大精神医学
pp.1326-1327
発行日 1979年9月10日
Published Date 1979/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216035
- 有料閲覧
- 文献概要
体臭を訴えてくる患者たち
体臭を主訴として各科を受診する人は少なくない.たとえば,腋臭,便臭,口臭,性器臭を訴えて,皮膚科,内科,泌尿器科,産婦人科,歯科を訪れる症例などが多いが,ふつうは客観的にも臭いが認められ,それに相当する身体的原因も発見される.しかし,なかには身体的異常がつかめぬばかりでなく,実際の臭いさえまったく,あるいはほとんど感じられないのに,「自分の体からいやな臭いが出ている」と固く思いこみ,徹底的な診察や検査を希望してくる場合もある.患者は若い人が多く,いずれも思いつめたような訴え方をする.よく聞いてみると,そういう臭いは「変な,嫌な,不快な」もので,周囲の状況によってその強さが変化する.たとえば自分の家や,全然知らない人ばかりのときにはあまり臭わないのに,学校や職場など自分と同等の仲間のいるところで一番強く臭い,いたたまれないというふうに訴える.また,ときには「自分の体が臭っているのは確かだが,どこがどう臭うのかはよくわからない」などということもある.
このような症例は日本でもヨーロッパでも1960年頃から注目をひき始め,一般には神経症の領域で扱われているが,うつ病や分裂病にもまったくあらわれないわけではない.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.