臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
XII.精神疾患
アルコール幻覚症 VS 分裂病(妄想型)
宮本 忠雄
1
,
吉野 啓子
1
Tadao MIYAMOTO
1
,
Keiko YOSHINO
1
1自治医科大学・精神科
pp.2116-2117
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216901
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なぜ鑑別が問題となるか
多年にわたる飲酒が各種の精神病的状態をひき起こす原因になることがある.そのうち一番多くみられる振戦せん妄は意識混濁を基礎にして,苦悶,せん妄,特有の幻視,手指振戦,自律神経症状などを示し,まず分裂病と間違うことはない、ところが,アルコール幻覚症は,意識清明で自律神経症状などもなく,しかも活発な言語性幻聴やそれと結びつく被害関係妄想が現れ,時に分裂病の幻覚妄想状態との鑑別が困難となることも少なくない.多くの場合は飲酒歴から診断を誤ることもないが,文献によれば,アルコール幻覚症と診断されたうち10人に1人は慢性分裂病に移行するといわれており,油断はならない.
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