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特集 創造と表現の病理
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
Ⅰ部・創造性の病理
精神分裂病と創造性
Schizophrenie und Schaffenskraft, unter besonderer Berücksichtigung der Halluzinationen.
宮本 忠雄
1
Tadao Miyamoto
1
1東京医科歯科大学神経精神医学教室
1Aus der Psychiatrischen und Nervenklinik, Tokyo Ika-Shika Daigaku
pp.315-320
発行日 1967年5月15日
Published Date 1967/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201189
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Ⅰ.まえおき
「精神分裂病と創造性」をめぐる問題は,これまでにも病誌の領域でのもっとも重要な問題のひとつとして,さまざまな観点から取り扱われてきている。とりわけ,分裂病性創造の様式的特徴やStilwandelの問題はすでに1920年代に精神医学的関心の前景を占め,Morgenthaler, W. 1),Jaspers, K. 2),Prinzhorn, H. 3),Weygandt, W.,Pfeifer, R. A. 4)らによつて熱心に論じられた。これらの詳細については筆者はほかで述べており5)6),また少ない紙面でふたたびそれを概説することもあまり意味がないので,ここではテーマをもう少し限定して,幻覚という精神病理学的現象を媒介として「分裂病と(芸術的)創造」の問題を重点的に考えてみようと思う(したがつて「綜説」というような一般的論述ではないことを前もつて断わっておきたい)。
幻覚をここでの手がかりとしてとくに選んだのは,ほかの分裂病症状と比べて創造活動との関連がより具体的・直観的にとらえられるという理由にもよるが,むしろ,分裂病と創造性を主体的に媒介するものがほかならぬ幻覚ないし「幻覚的意識」ともいうべきものであると息われるからで,結論的にいえば,このへんに分裂病的創造の特性がひそんでいると予感される。
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