今月の主題 腸疾患の臨床
小腸潰瘍性病変
非特異性小腸潰瘍症とその周辺
八尾 恒良
1
1福岡大第1内科
pp.1164-1166
発行日 1979年8月10日
Published Date 1979/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215996
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はじめに
非特異性多発性小腸潰瘍症は岡部(1966)1),崎村(1970)2)が6例について詳細な臨床的病理学的記載を行った.しかし,当時本邦においてはクローン病の経験例,報告例が少なく,本症をクローン病またはその初期とみなす研究者もあり,独立した疾患単位としての概念には異論があった.事実,岡部,崎村らも,本症は"限局性腸炎とは全く別な疾患とはいいきれない"と述べている.
その後筆者らは本症の長期経過3,4)を追求し,また最近経験したクローン病との臨床的病理学的比較を行い4,5),本症がクローン病とまったく異なった疾患であることを明らかにした.すなわち,本症は臨床的に腸管潰瘍からの出血を主病像とし炎症所見に乏しいのに対し,クローン病では腹痛,発熱,下痢,赤沈亢進,CRP陽性などの炎症所見を主臨床像としていること,これらの臨床所見は両者の病理学的な炎症所見の差を現していると考えられることなどを報告した.そして「非特異性多発性小腸潰瘍症」という呼称は,独立した疾患概念を表す言葉としてはまぎらわしく,むしろ「慢性出血性小腸潰瘍症」と呼称すべきことを主張した.
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