今月の主題 癌と免疫
癌抗原の検出
α-胎児蛋白
遠藤 康夫
1
1東大第1内科
pp.984-986
発行日 1979年7月10日
Published Date 1979/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215946
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はじめに
α-胎児蛋白(α-フェトプロテイン,以下AFPと省略する)とは,電気泳動上α-グロブリンの位置に泳動される胎児性蛋白の意であって,胎生期に特有であり,成人血清中には,通常証明されない.ヒトの胎児にこのような胎児特異性蛋白が存在することは,Bergstrandらにより1956年すでに発見されていた.胎児に特有であって成人血清中には正常状態では存在しないAFPが,病的状態で再出現してくることが,マウス腹水肝癌移植例において実験的に見出され(Abelev, 1963),ついでヒトの原発性肝癌について観察され(Tatarinov, 1964),これが他の疾患(癌を含めた)で出現しないことからその診断的価値が認められるようになった.その後測定法の鋭敏化に伴って,原発性肝癌以外の疾患でも血中AFPの増加する例がみられることがわかり,特異性の面での価値は幾分うすらぎはしたものの,反面,より小さな肝癌の発見が可能となり,多大の利益をもたらしてきている.
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