今月の主題 血漿蛋白
技術解説
抗原蛋白質の精製法—α-フェトプロテインを例として
原 彰彦
1
,
西 信三
2
Akihiko HARA
1
,
Shinzo NISHI
2
1北海道大学医学部第一生化学
2山梨医科大学生化学
pp.755-763
発行日 1982年7月15日
Published Date 1982/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911587
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胎生期に合成されるが,出生後にはその合成が停止するかないしは著しく低下する蛋白で,かつ成体細胞の癌化に伴ってその合成が再開される蛋白を癌胎児性蛋白と呼ぶ.Α-フェトプロテイン(AFP)は,現在もっとも研究が進んでいる癌胎児性の血清蛋白の一つである.
1963年Abelevら1)が,マウス移植肝癌がAFPを産生して担癌マウスの血中に分泌されることを報告し,次いでTatarinov2)が原発性肝癌患者の血中にAFPを検出してAFPと肝癌の関連が明らかにされ,その後,肝癌とAFP出現の特異性および頻度につき多くの研究がなされた.これらの研究は,抗血清を用いたOuchterlony法(二重拡散法),Mancini法(一元放射状免疫拡散法)による寒天ゲル内沈降反応による定性,定量法により行われてきた.肝細胞癌患者ではその60〜80%と高率に血清AFPは陽性を示し,またその出現は特異性が高く,肝細胞癌以外の陽性例は悪性奇形腫および一部の転移性肝癌であり,それ以外はきわめてまれである.
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