今月の主題 意識障害へのアプローチ
意識障害のトピックス
植物状態
柳沢 信夫
1
1信州大学医学部・第3内科
pp.1902-1905
発行日 1986年11月10日
Published Date 1986/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220611
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近年,意識障害患者の全身管理法の発達に伴い,重篤な中枢神経疾患や脳損傷の後遺症により,大脳の活動がほぼ全面的に失われた状態で長期間経過する症例が増え,医療上および社会的・倫理的な問題を提起している.
外からの働きかけに対して,ほとんど無動,無言で反応に乏しく,しかしながら睡眠,覚醒のリズムが明らかに存在し,瞬目をしたり動くものを眼で追い,一見,外界を認知しているかにみえる状態にいくつかのものがある.無動性無言akinetic mutism,失外套症候群apallisches Syndrom,遷延性植物状態persistent vegetative state,とじこめ症候群locked in syndromeなどとよばれる状態がそうである.一見,類似した病像を呈するこれらの病態の責任病変と神経症状の発生機序は単一ではない.意識障害の特殊型(akinetic mutism),不可逆的な大脳損傷(遷延性植物状態および失外套症候群),随意運動の遠心路の全般的遮断(とじこめ症候群)などがあり,これらは精神活動の内容や予後が一様でなく,その治療にあたっては,治療内容はもとより,医療従事者,家族のもつべき心構えがそれぞれに異なる.外見上の類似からこれらを同一に扱うことは重大な過ちをおかす危険があることに留意すべきである.
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