臨時増刊特集 これだけは知っておきたい治療のポイント 第2集
VII.代謝・栄養障害
2.糖尿病治療の問題点
高齢者糖尿病患者の治療の実際
北村 信一
1
1済生会中央病院内科
pp.2042-2044
発行日 1978年12月5日
Published Date 1978/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208247
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治療方針
治療の進歩による糖尿病患者の寿命延長や高齢人口の増加に伴う老年発症糖尿病患者の増加によって,高齢者糖尿病患者は増加している.筆者らの病院の経験でも,最近5年間の初診糖尿病患者3477例のうち932例は60歳以上であり,日常の診療で扱う糖尿病患者の1/4が高齢者で占められている実情である.糖尿病の治療は糖尿病を治癒させることではなく,患者が体質に基づく糖尿病という病気をもちながら,健康的な社会生活をできるだけ長く続けることができるように管理していくことであるが,高齢者糖尿病患者の場合においても,このような糖尿病治療の基本的なあり方に変わりはない.また,治療方法においても,食事療法,運動療法を基礎とし,効果不十分のときにインスリン注射や経口血糖降下剤をつけ加えるという一般の糖尿病治療方法と同じである.
ただ,高齢者糖尿病患者には臨床像にいくつかの特徴1)がある,その主なものをあげれば,①高齢者には耐糖能異常者が多い,②自覚症状に乏しい,③尿糖が出にくい,④合併症,とくに血管障害を伴うことが多い,⑤感染などを契機として急に高滲透圧性非ケトン性昏睡に陥ることがある,⑥新しい事態に対応しにくく,食事療法や運動療法に協力しにくい,⑦血糖降下剤使用時に低血糖を起こしやすい,などである.したがって,このような高齢者糖尿病患者の特徴をよく理解した上で実際の治療に当たらなければならない.
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