特集 高齢の糖尿病患者への訪問看護
高齢者糖尿病の理解
櫻井 孝
1
,
遠藤 英俊
2
,
横野 浩一
1
1神戸大学医学部・老年科
2国立療養所中部病院・内科
pp.3-9
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901873
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はじめに
高齢者糖尿病患者での治療の目的は,急性の代謝失調を起こさないようにすること,および慢性血管合併症の発症・進展を予防し,できるだけ健常な日常生活を送れるようにすることであり,このことは成人の糖尿病と何ら変わることはない.しかし一口に高齢者糖尿病といっても,健康な高齢者,虚弱な高齢者,寝たきりの高齢者,長期生存を期待できない高齢者など個々の患者の持つ背景は様々である.高齢者糖尿病患者では糖尿病性網膜症のため視力障害があり,高血圧を合併しているなどの成人の糖尿病でも見られる糖尿病性合併症に加え,膝が痛くて運動療法ができない,あるいは物忘れがひどくなり内服薬の管理ができない,更には一人住まいのため家族の支援も期待できないといった身体的側面以外の問題で糖尿病の良好なコントロールが困難である症例にしばしば遭遇する.
一方,わが国の糖尿病の頻度は加齢とともにほぼ直線的に増加し,40-50歳で5-10%であるのに対して,60歳を超えると10-15%に増加する.この数値から推定すると,現在日本には約300万人の60歳以上の糖尿病患者が存在すると考えられている1).今後さらに人口の急速な高齢化が進むと高齢者糖尿病患者の絶対数はますます増加することが予想される.
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