天地人
関連病院か関連大学か—勤務医急増期を迎えて
啓
pp.1533
発行日 1978年10月10日
Published Date 1978/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208077
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わが国の医師の就業状況調査では,勤務医の比率は年々上昇をつづけ,最近,ついに開業医の数を上回ったということである.医師向け月刊誌のアンケートでも,将来,開業を考えていないという勤務医が増え,勤務医が開業医の予備軍であった時代は終わったとみなされる.個人の投資ではとても採算がとれないうような高額医療機器の発達,普及や,それに伴う一般民衆の病院志向,専門医崇拝・家庭医軽視の風潮,家族ぐるみの肉体労働を強いられながら,ちょっとしたことでも患者からのクレームに脅かされ,その上,マスコミに叩かれる開業医生活にイヤ気を感じるなど,いくつもの原因が重なりあった結果であろう.
勤務医といえば,永いあいだ大学の医局支配が圧倒的だった.大都市の総合病院から山間僻地の小病院,個人病院にいたるまで,学閥地図がピッタリと色分けされ,ひとつの大学のなかでも隣りの内科や外科の勢力範囲を侵さない暗黙の諒解があった.これらは"関連病院"と呼ばれ,その数が多いほど,また優秀な病院を支配している医局ほど,羨望の眼で見られたものである.一方,病院の管理者や,病院を設置している地方自治体,農協などの団体の当事者にとっては,医師を派遣していただく大学の教授や医局長に,智慧をしぼって最大のサービスにつとめ,ご機嫌を損じないよう,あらゆる手段を尽くさねばならないのがアタマの痛い仕事であった.
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