今月の主題 消化・吸収の基礎と臨床
治療
消化酵素
内藤 聖二
1
1順天堂大学災害医学研究所
pp.672-673
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207871
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はじめに
治療の面から消化酵素を考えると,最近はきわめて安易に消化酵素剤を投与している.従来は消化酵素の分泌障害,消化不良症候群の認められる場合に消化酵素剤が用いられていたが,近年,多種の消化酵素剤の入手ができるようになり,胃,腸,肝をはじめ,消化機構に障害のみられない疾患にも使用されている,しかし,消化と代謝の研究が進歩し,一方,吸収面では電子顕微鏡学的研究,細胞膜消化酵素の研究が発展してくると,臨床面においても消化と吸収を分けて治療に当たることが必要であり,消化酵素の治療も理論をもとにした方法を新しく作るべきものと考えられる.
消化の要素は胃腸管腔内の栄養素と消化酵素の作用する面と,各種の栄養素により分泌される消化管ホルモンの作用する面が複雑に組み合わされている。胃腸管内粘膜は消化液を分泌するが,消化機構の上では消化管ホルモンを分泌して,胃液,十二指腸液,膵液,胆汁を分泌させ,吸収の面に関与する胃腸管運動を促進させる,アルカリ液,アミノ酸,アルコール,脂肪酸が胃に入ると,幽門部に多く存在するガストリン分泌細胞はこれら物質の刺激をうけ,胃より塩酸,ペプシンその他の消化要素を分泌させる,胃において消化された一部の物質と酸は小腸に進入すると,小腸の内分泌細胞を刺激して,胆汁,膵液を分泌させる.
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