臨時増刊特集 診断基準とその使い方
XI.小児の疾患
川崎病
川崎 富作
1
1日赤医療センター小児科
pp.2178-2181
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207632
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概念
川崎病(または本症と略)は主として4歳以下の乳幼児に好発する原因不明の熱性疾患で,その主な症状は,発熱,発疹,眼球結膜充血,口唇口腔粘膜充血,頸部リンパ節腫脹および掌蹠紅斑,硬性浮腫,指先からの落屑を伴う四肢末端の変化である.この主要症状の一つ一つはとくに特徴的とはいえないが,この6つの症状をすべて備えた症例は独特の疾病像を示し,他の小児疾患と容易に区別できるほど特徴的である.しかも,このような臨床像をもった小児では致命率が1〜2%で,剖検例はすべて冠動脈になんらかの病変が証明されているが,主な変化は冠動脈瘤と血栓閉塞である.冠動脈以外の動脈にもしばしば著明な病変をもち,病理組織学的には,欧米で以前から稀に報告されてきた乳児型結節性動脈周囲炎(IPNと略)と区別することができない.この故に,米国の病理学者はIPNと川崎病とは同一疾患と考えているようである.本症の生存例の20%内外に冠動脈瘤の形成が証明されており,小児の心筋梗塞を起こす疾患として,小児循環器の専門家の間にとくに注目されるようになった.本症は本邦に圧倒的に多発しているが,米国をはじめヨーロッパ,アジアなどでも報告されるようになり,日本独特の病気ではないことが判明した.昭和45年より厚生省の本症研究班が発足し,疫学,病理,病因,臨床の総合研究が続行されてきているが,残念ながら未だに原因は不明である.
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