臨時増刊特集 診断基準とその使い方
V.内分泌・代謝疾患
ADH過剰症候群
斉藤 寿一
1
1自治医大内分泌代謝科
pp.1890-1893
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207544
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概念
体液浸透圧または体液量の恒常性を維持する上で,視床下部-下垂体後葉-腎で形成されるフィードバック機構が主要な役割をはたしており,その異常が臨床的には低ナトリウム血症または高ナトリウム血症として発現することがある。ADH過剰症候群(SIADH,Syndrome of Inappropriate Secretion of ADH)は,体液量の減少がない状態で,血漿浸透圧の低下があり,もしADH分泌調節が適切(appropriate)であれば,ADH分泌が抑制され,水利尿が発来して血漿浸透圧が正常域にまで上昇是正されてしかるべき病態で,ADH分泌が相対的高値にとどまるために,低Na血症がつづく状態である.症状および検査成績の組み合わせとして本病態は規定され,その成因となる原疾患は表1に示すごとく,きわめて多種のものが含まれるが,バゾプレシンの由来に基づいて2大別すれば,腫瘍とりわけ未分化癌による異所性ADH産生に基づく本症候群と,下垂体後葉に由来するADHの過剰とにわけられる.ここにあげた各疾患は,本症候群の提唱者Schwartzらの示した基準1)に合致する典型的な症状に基づいて報告されているが,これ以外の疾患における低Na血症,とりわけ副腎皮質機能低下症,下垂体前葉機能低下症,甲状腺機能低下症などにおいて,低Na血症の成立と病態維持にADH分泌がどの程度関与しているかは,なお今後にのこされた課題となっている.
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