今月の主題 呼吸不全とその管理
呼吸不全の病態生理
急性呼吸不全
小野寺 壮吉
1
1旭川医大第1内科
pp.1506-1507
発行日 1977年11月10日
Published Date 1977/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207427
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急性呼吸不全の定義
急性呼吸不全acute respiratory failureは,その血液ガス組成を基盤に定義されており,PaO2<60mmHgand/or PaCO2>50mmHgの状態である1).しかし,これらの病態の成立は非特異的な原因によるのであって,呼吸中枢,気道,肺実質の障害など多数の原因疾患があげられる(表1).近来とくに注目されているのは,adult respiratory distress syndrome, ARDSであって,肺胞・毛細管膜の広汎な傷害をきたし,shock lung,wet lung, stiff lung, traurnatic lungなどとも呼ばれ,その成立経過は多彩である.現在のところ,臨床所見によって定義されており,重症疾患に合併し,当初は肺の異常のないことが多く,入院後数時間から数日を経て急激な呼吸不全状態に陥り,死亡する.基礎疾患として,各種原因によるショック,胸部外傷,広汎性ウイルス肺炎,脂肪塞栓などがあげられ,誘因となるものに,汎発性血管内凝固症候群,過剰補液,O2中毒が想定されているが,なお不明の点が多い.このような激甚な急性呼吸不全はcatastrophic pulmonary failure3)とも表現されている.重症疾患や手術時の呼吸・循環の支持方法が進歩して,かつては死を避けられなかった症例を救命しうるようになってきた反面,新しい課題を与えられることになった.
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