今月の主題 浮腫と臨床
浮腫の成因—局所性因子
矢吹 壮
1
,
小林 進
2
1東邦大第3内科
2東邦大内科
pp.1215-1217
発行日 1977年9月10日
Published Date 1977/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207340
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はじめに
生体は種々な条件下において内部環境を一定に保持する能力を有する極めて精巧かつ複雑な制御系とみなされる.その一つとして体液の調節機構があり,体液のバランスを保ち,生命維持に重要な役割をはたしている.体液はその分布の部位に対応して細胞内液と細胞外液に大別され,細胞外液はさらに組織間液と血管内液(リンパ管内液)に分けられる.この貯留した細胞外液は大部分は血漿由来と考えられる.したがって浮腫が発生するためには,体内水分が全体として増加するか,あるいは体内水分は全体としてあまり増えていないが,水分の体内分布異常が起こるかのいずれかである.前者は腎における水,Naの排泄が中心となり,全身性因子といわれ,後者は毛細血管を通っての水分の出入,組織水保持力,リンパ流などが中心となり,局所性因子または組織因子とよばれている.もっとも腎において再吸収された水は血中に入り,微小血管壁を通って組織にいたるため,いかなる浮腫でも局所性因子が関与しているわけである.以下,局所性因子の面から浮腫について述べる.
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