今月の主題 癌治療の最前線
化学療法
Suppository(経直腸投与)とその効果—抗癌剤の投与法をめぐって
木村 禧代二
1
1国立がんセンター病院
pp.1121-1123
発行日 1977年8月10日
Published Date 1977/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207313
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抗癌剤坐薬化へのあゆみ
癌化学療法はいかにあるべきか,最大の効果をあげるための抗癌剤の投与法はいかにあるべきかは,常に腫瘍,薬剤,宿主の面から追求されねばならない問題の一つである.図はCarter(Northern California Cancer Program)らがWHO(世界保健機構)に提出した癌化学療法に関するレポートを,さらに筆者が修飾したものである.すなわち,血中に投与された薬物は一定の濃度で,一定時間血中にとどまり,それぞれ腫瘍と正常組織に到達する.この場合の腫瘍と正常組織の薬物の受取り方により,効果と副作用が規定されるのである.すなわち,より高濃度の抗癌剤が腫瘍組織に到達,それが腫瘍細胞の回転の立場からより有効に殺腫瘍細胞性を発揮する反面,正常細胞では,たとえ抗癌剤が到達しても,それが腫瘍細胞に比しより高く不活性化されることが効果の増強と副作用軽減という立場から要求される.
このような立場から,最大の効果を発揮するとともに副作用の発現を最少にとどめるべき投与法の研究は,癌化学療法の発展のため最も重要な研究課題である.しかし,従来抗癌剤の多くは,非経口投与されるべきものとの既成観念の中で考えられ,2,3の薬物を除き大部分の薬剤は経静脈的に投与されてきた.
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