ここにも医療あり
本来の生活空間で患者をとらえる—在宅患者の訪問診療
別府 宏囲
1
1都立府中病院神経内科
pp.782-784
発行日 1977年5月10日
Published Date 1977/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207218
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医者とは病気を治す職業であり,病院は病気を治す場所である.医者になるまでは迂濶にもそう信じて疑わなかった.医学部を卒業して10余年,一体何人の患者を治したであろうか.退院時カルテをまとめながら,転帰の項に「軽快」あるいは「不変」と記入するときのためらいは今も変わりない.
このような無力感は,ひとつには自分の選んだ科(神経内科)の特殊性によるかもしれない.学生時代,神経学の教科書を読みながら,原因不明,治療法なしという記載の多さに何度も呆れた記憶があり,その状況は10年を経た現在もほとんど変わっていない.依然として神経疾患の多くは難治であり,治療の大半は姑息的な対症療法の域を出ない.自分が神経学を選んだ動機を振り返ってみても,むしろ診断学的興味に惹かれたことが主な理由であった.
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