今月の主題 心筋梗塞—今日の問題点
治療
冠拡張薬の効用
加藤 和三
1
1心臓血管研究所
pp.94-96
発行日 1977年1月10日
Published Date 1977/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207033
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近年,多くの冠拡張薬が開発され,狭心症治療薬として使用に供されている.それらの薬剤はいずれも冠血管に直接作用してその拡張を起こす作用を有するものであり,対象となる症例の増加に伴って,その使用は着実に増しつつあると思われる.しかし,その効果についてはなお疑念を抱くものが少なくなつ,また,最近における冠動脈疾患の病理・冠循環研究の進歩からそれらの作用・効果をあらためて見直す必要のあることが示され,病理や生理に関する新しい知見に基づいての再検討が行われている現状である.
このような冠拡張薬は,これまで心筋梗塞については急性の場合はまったく無効とされ,慢性期の場合は狭心症と同様と考えられてきた.ところが,最近,冠拡張薬のうち亜硝酸薬により急性心筋梗塞の改善がみられることがあるとの報告が散見され,またジピリダモールには血小板凝集能抑制によって梗塞の拡大を防ぐ作用のあることが報告されている.なお,それらの効果は確実なものではなく,その発現にはいくつかの条件があるごとくであるが,急性心筋梗塞治療の新しい可能性として注目してよいと思われる.さらに狭心症と心筋梗塞の間には,冠動脈の異常ないし冠血流の変化に関しなんらかの差があるとみられることから,慢性期における冠拡張薬の効果についても若干の相違があることが想像される.
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