新薬の使い分け
慢性肝炎で薬を投与する場合
太田 康幸
1
1愛媛大第3内科
pp.2186-2187
発行日 1976年12月10日
Published Date 1976/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206996
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慢性肝炎は経過の長い疾患であり,病因側(肝炎ウイルス,とくにB型,薬剤,自己免疫,その他)だけでなく,宿主側の反応にも異常があって成立する病態と理解されている.そのnatural historyを正確に知ることは容易ではないが,多くの例では慢性肝炎の病態のままで経過が遷延しているものと思われる,しかしながら,肝硬変へ移行する例もあり,比較的短期間(数年)での例と,長期間(10年前後)を経て移行する例とが観察されている.肝生検による追跡調査によって肝硬変移行率を筆者1)が調べたところ,10%前後と50%前後のふたつの病型が観察されたが.前者は長期間を要して硬肝変へ移行する群であり,後者は比較的短期間のうちに移行する群であった.いずれも慢性肝炎活動型の肝生検所見を示したが,比較的短期間で肝硬変へ移行した群では,肝実質の亜小葉性集団壊死が重積したことに問題があり,臨床像のうえでは経過中に急性増悪が現れ,なんどもそれをくり返すうちに小葉改築が進行し,偽小葉形成が現れ,肝硬変像を完成した1).
したがって,慢性肝炎薬物療法の原則は,一般肝庇護を行い,再生・治癒機転をたかめる,慢性化機序の阻止ないし抑制を図る,肝硬変移行への重要な促進因子となる急性増悪の発現を阻止するという諸項目に注意して行うべきである.
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