診断基準とその使い方
劇症肝炎
太田 康幸
1
1岡山大第1内科
pp.109-112
発行日 1976年1月10日
Published Date 1976/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206386
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はじめに
1946年,LuckéおよびMallory1)は,第二次世界大戦に際して,戦地で兵士たちのあいだに流行した重篤で劇的な経過をとるウイルス肝炎患者の病理解剖所見について記載した.彼らが観察した196例の剖検例のうち半数以上は発症後10日以内に死亡し,およそ3/4例は3週間以内に死亡しており,このような症例を彼らは流行性肝炎の劇症型と呼び,通常の良性の経過をとる症例と区別することを提案したのである.かつてカタル性黄疸と呼ばれた黄疸患者が,肝生検法の普及と臨床疫学的研究によってウイルス肝炎であることが明らかにされたのは,RoholmおよびIversen2)やNeefeら3)の功績に負うところ大であるが,通常,良性の経過をとる急性ウイルス肝炎に対して,戦地での兵士たちのあいだで流行した超急性の経過をとる肝炎患者の在存は,急性黄色肝萎縮ないし赤色肝萎縮もまたウイルス肝炎の特殊型として,その病因との関連が明らかにされたことで,ウイルス肝炎研究での一時期を画したといえよう.
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